「退職しよう」——そう心が決まったのに、かえって落ち着かなくなった。そんな状態ではないですか。

伝えるタイミング、引き継ぎ、有給、返すもの、もらう書類。やることが頭に浮かんでは消えて、「何かを忘れている気がする」という不安だけが残る。退職は多くの人にとって数年に一度あるかないかの出来事なので、全体像が見えないのは当たり前です。

大丈夫です。退職までにやることは、時系列に並べてしまえば「順番にこなすだけ」のリストになります。

私は人事に近い立場で、退職していく人の手続きや見送りに関わってきました。その経験から言えるのは、退職の段取りでつまずいた人は「やることを知らなかった」というより、「やる順番と期限を知らなかった」ことがほとんどだった、ということです。

この記事は、退職を決めてから最終出社日までの「時系列の地図」です。ひとつずつの手続きを深掘りするより、「全部でこれだけ」「この順番でやれば忘れない」がわかることを大事にしました。

なお、「辞めたい気持ちはあるけど、まだ決めたわけではない」という段階の方は、先に読む記事が別にあります。決める前の準備はこちらで整理しています。

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退職までにやることの全体像【時系列早見表】

退職までにやることの全体タイムライン。伝える前・伝える日・伝えたあと・最終出社日・退職後の5段階

まず、この記事の結論でもある早見表から。時期の目安は「退職日の1〜3か月前に伝える」という一般的なケースで書いています。

時期の目安やることポイント
① 伝える前就業規則の確認/有給残日数の確認/退職日の目安を決める退職日から逆算する「材料集め」
② 伝える日直属の上司に意思表示 → 退職日の相談 → 退職届早く伝えるほど選択肢が増える
③ 伝えたあと〜最終出社引き継ぎ/有給消化の調整/会社経由の手続き書類の記入引き継ぎと有給のバランスがカギ
④ 最終出社日返却(保険証・社員証・PCなど)/受け取るものの確認忘れ物チェックの日
⑤ 退職後健康保険・年金・失業給付の手続き期限が短いものは14〜20日。別の地図で解説

ここから、①〜④を順番に見ていきます(⑤退職後は、この記事の最後で「次の地図」をご案内します)。


時期①|伝える前 ── 材料を集める

退職を伝える前の準備。就業規則と有給残日数を確認する

伝える前に確認する2つの数字。就業規則の退職ルールと有給の残り日数

伝える前にやることは、たった2つです。「会社のルール」と「自分の有給」の確認。この2つが、退職日を決めるための材料になります。

1つ目は就業規則の確認です。法律上は、期間の定めのない雇用なら退職を申し入れてから2週間で辞められることになっています(民法627条)。ただ、多くの会社の就業規則には「退職の1〜2か月前までに申し出ること」といったルールが別に定められています。まずは自社の規則で「何日前」と書かれているかを確認しておくと、退職日の相談がスムーズに進みます。

2つ目は有給残日数の確認です。地味に見えて、これが一番大事だと私は考えています。理由は後ほど詳しく書きますが、私が見てきたつまずきの多くが「有給の残り日数を把握していなかった」ことから始まっていたからです。給与明細や勤怠システムで確認できることが多いですが、わからなければ人事・総務に聞けば教えてもらえます。

なお、転職活動をこれから始める方は、「在職中に動いて大丈夫かな」という不安もあると思います。その心配はこちらで整理しています。

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時期②|伝える ── 退職日を決める

退職の意思表示はいつまでに? 早いほど「全部」を取りにいける

退職日から逆算すると伝える日が見える図。退職日3月31日から有給消化・最終出社日・引き継ぎをさかのぼると伝えるのは1月中が安心

法律の話を先にすると、退職の意思表示に「◯か月前でなければならない」という法律上の決まりはありません。先ほどの民法627条のとおり、2週間前の申し入れで退職はできます。引き継ぎも、実は法律上の義務ではありません。

そのうえで、人事側から退職者を見送ってきた経験から、ひとつだけお伝えしたいことがあります。

意思表示から退職日までの期間が短いと、困るのは会社よりも、実は本人でした。

理由は有給休暇です。例えば、退職日を3月31日、有給が15日残っているとします。有給をすべて使うなら、最終出社日は3月10日ごろ。つまり実際に働ける期間は、退職日より3週間も手前で終わります。意思表示が2月の後半だったら——引き継ぎに使える時間は、ほんの数日です。

こうなると、「有給を諦めて引き継ぎに充てる」か「有給を取って引き継ぎを駆け足にする」かの二択を迫られます。私が見てきた中で、余裕を持って伝えた人ほど、有給も使い切れて、引き継ぎも丁寧にできて、最後の日を穏やかに迎えていました。もめずに、権利も使い切って、気持ちよく送り出される。その「全部」を取りにいく一番簡単な方法が、早めに伝えることだと私は思います。

伝え方そのもの——誰に、何と言えばいいか、引き止められたらどうするか——は、こちらで詳しく整理しています。

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時期③|伝えたあと ── 引き継ぎと有給

退職を伝えたあとにやること。引き継ぎ・有給消化・会社の手続き書類

伝えたあとにやること3つ。引き継ぎ・有給消化の調整・会社の手続き書類

退職日が決まったら、最終出社日までにやることは大きく3つです。

1つ目は引き継ぎ。おすすめは、最初に「引き継ぎリスト」を1枚作ってしまうことです。担当業務・関係者・進行中の案件・データの場所。これを退職日から逆算したスケジュールに落とすと、「終わらないかもしれない」という漠然とした不安が、「あと◯件」という数えられるタスクに変わります。

2つ目は有給消化の調整。残り日数と引き継ぎの進み具合を見ながら、上司と相談して消化のスケジュールを決めます。まとめて最後に取るか、少しずつ取るかは職場との相談次第ですが、退職時の有給消化そのものは働く人の正当な権利です。理由を聞かれて答えに困る、といった心配についてはこちらで書いています。

👉 あわせて読みたい:有給の理由に嘘は必要? 言う義務と、申請を断られたときの対処まで人事目線で整理

3つ目は、会社から渡される手続き書類への対応です。退職にあたっては、会社経由で社会保険や雇用保険の手続きがいくつも動きます。本人が書くものは会社が案内してくれるので、内容自体は難しくありません。ただ、ここでひとつ、人事側から見てきた「あるあるのつまずき」をお伝えしておきます。

会社の手続きのやり方は、思った以上に変わります。 私が手続きに関わってきた中でも、紙の書類が中心だった頃は、記入漏れや押印忘れで書類が行ったり来たりすることがよくありました。それが最近は、電子申請に切り替わる会社が増えています。数年前に辞めた同僚から聞いた話や、ネットの体験談どおりに進むとは限りません。「前はこうだったらしい」をあてにせず、いま時点のやり方を人事・総務に確認する。これだけで、手続きの行ったり来たりはかなり防げます。


時期④|最終出社日 ── 返す・受け取る

最終出社日にやること。返すもの・受け取るもののチェックリスト

最終出社日に返すものと受け取るもののチェックリスト

最終出社日は「忘れ物チェックの日」です。返すものと受け取るものを、リストにしておきます。

返すもの(会社へ)

  • 健康保険証(退職日の翌日から使えません。家族の分も忘れずに)
  • 社員証・入館証・名刺
  • 会社から貸与されたPC・スマホ・鍵
  • 制服や備品、会社の経費で購入したもの

受け取るもの(会社から)

  • 雇用保険被保険者証(会社保管の場合。転職先や失業給付の手続きで使います)
  • 年金手帳・基礎年金番号通知書(会社に預けている場合)
  • 源泉徴収票(後日郵送が多い。転職先での年末調整や確定申告で必要)
  • 離職票(後日郵送。おおむね退職後2週間〜1か月で届きます)

ここで、人事側で見てきた中から、一番お伝えしたい実務の話をひとつ。離職票は、迷ったら「必要」で受け取っておくと安心です。

離職票は失業給付(雇用保険の基本手当)の申請に使う書類で、退職時に会社から「発行しますか?」と確認されることがあります。転職先が決まっている人は「不要」と答えることもできるのですが——私が見てきた中には、よくわからないまま「不要」としたあとで、実は必要だったとわかったケースがありました。例えば、転職先への入社が延びた、入社前に事情が変わった、といった場合です。あとからでも発行は頼めますが、手元に届くまでに時間がかかり、その分だけ失業給付の手続きも遅れます。発行してもらって使わない分には、何も困りません。

👉 あわせて読みたい:失業給付はいくら・いつから?自己都合と会社都合で何が変わるか整理

退職後の手続きは「次の地図」で。健康保険・年金・失業給付

退職後の手続き3つと期限。健康保険は14〜20日・年金は14日・失業給付は離職票が届いてから

退職日を過ぎたら、今度は自分で役所やハローワークに出向く手続きが始まります。大きくは3つ、健康保険・年金・失業給付です。

ここで覚えておきたいのは期限だけ。健康保険と年金の切り替えは、退職後14〜20日という短い期限があります(選ぶ手続きによって異なります)。「離職票が届いてから全部まとめてやろう」と待っていると、先に期限が来てしまいます。

退職後の手続きの全体像は、この記事と対になる「退職後の地図」で整理しています。退職日が近づいてきたら、次はこちらをどうぞ。

👉 あわせて読みたい:【会社員向け】退職後のお金と手続き、何から考える?健康保険・年金・失業給付の「地図」

なかでも健康保険は「任意継続と国民健康保険のどちらが安いか」で迷いやすいところ。比べ方はこちらで詳しく書いています。

👉 あわせて読みたい:退職後の健康保険、任意継続と国民健康保険はどっちが安い?保険料の比べ方

体調が理由で退職する方へ

もし、心や体の不調が理由での退職なら、この記事の時系列に「傷病手当金」という大事な要素が加わります。在職中から受け取っていた場合、条件を満たせば退職後も継続して受け取れる制度があり、退職日当日の過ごし方(出勤するかどうか)が影響するという見落としやすいポイントもあります。退職日を決める前に、こちらに目を通しておくと安心です。

👉 あわせて読みたい:【会社員向け】傷病手当金とは?会社を休んでももらえるお金の条件・金額・申請を整理

まとめ:最初の一歩は「就業規則」と「有給残日数」の確認から

最後に、この記事のポイントを3つにまとめます。

  • 退職までにやることは、時系列に並べれば「順番にこなすだけ」。早見表の①〜④で進める
  • 意思表示は早いほど、有給も引き継ぎも「全部」取りにいける。「有給の残り日数」と「退職日までの期間」の2つが段取りのカギ
  • 書類まわりは「いま時点のやり方」を会社に確認。離職票は迷ったら「必要」で受け取る

今日できる一歩は、就業規則の退職ルールと、有給の残り日数を確認しておくこと。この2つの数字がわかるだけで、退職日の計画は一気に具体的になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 退職は何か月前までに伝えればいいですか?

法律上は、期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で退職できます(民法627条)。ただし多くの会社は就業規則で「1〜2か月前」などと定めています。私が見てきた経験では、有給消化と引き継ぎの時間を確保するため、就業規則の期限よりさらに余裕を持って伝えた人ほど、最後まで穏やかに進んでいました。

Q2. 有給が退職日までに使い切れなさそうです。どうすればいいですか?

まず正確な残り日数を確認したうえで、早めに上司へ相談することだと思います。退職日をずらせるなら選択肢は広がります。消化しきれない分の買い取りは、会社によって対応が分かれるところなので、就業規則や人事への確認が確実です。

Q3. 離職票は「不要」と答えてもいいですか?

転職先が決まっていて失業給付を受けない場合は「不要」でも手続き上は問題ありません。ただ、入社時期が延びるなど事情が変わる可能性はゼロではありません。発行してもらって使わなくても困ることはないので、迷ったら「必要」で受け取っておくのが私の考えです。

Q4. 引き継ぎが終わらないまま最終出社日が来そうです。責任を問われますか?

引き継ぎは法律上の義務ではなく、過度に心配する必要はありません。そのうえで、引き継ぎリスト(業務・関係者・データの場所の一覧)を残しておくと、口頭で伝えきれない部分を補えます。残された側が一番困るのは「どこに何があるかわからない」ことでした。

Q5. まだ退職を迷っている段階です。何から始めればいいですか?

決める前の段階なら、この記事より先にやれることがあります。お金まわりの確認と「自分の相場」を知ること。在職中だからこそ落ち着いてできる準備を、別の記事で整理しています。

👉 あわせて読みたい:退職したいけど何から始める? 在職中にやっておくことと「自分の相場」の知り方

参考にした公式情報

※この記事は、一般的な制度の説明と筆者の経験にもとづく情報提供であり、個別の状況への助言ではありません。退職のルールや社内手続きはお勤め先の就業規則・人事や総務の案内を、失業給付など公的な手続きは最新の公式情報をご確認ください。


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