退職を決めた。でも、有給が20日近く残っている。全部使いたいけれど、言い出したら嫌な顔をされないだろうか——。「引き継ぎもあるのに」と言われたらどうしよう、と考えて、切り出せずにいませんか?

先にお伝えします。退職のときの有給は、会社が断ることはできません。これは私の意見ではなく、法律上そうなっています。実際、私が退職の面談に関わってきた中でも、「全部使いたい」というお申し出をお断りしたことは一度もありません。

そのうえで、ひとつだけ知っておくと得なことがあります。退職日をどう決めるかで、その後の話の進み方はずいぶん変わります。もめずに、気持ちよく最後の日を迎えるための決め方があります。

この記事では、会社が断れない理由、実際にどれくらいの人がまとめて使っているか、引き継ぎと両立する退職日の決め方、そして消化中の過ごし方までを整理します。

まねぶ
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「言い出しにくい」と感じている時点で、あなたはもう十分に周りのことを考えています。まず、権利のことから整理していきましょう。

結論 退職時の有給消化を、会社が断ることはできません

会社には、有給の日程について時季変更権という権利があります。「その日は忙しいので、別の日にしてもらえませんか」とお願いできる、という仕組みです。

退職時の有給を会社が断れない理由。会社には別の日にとお願いできる権利(時季変更権)があるが、退職日より後ろには動かせる日がないため、退職までの有給消化は断ることができない

ここが大事なところです。この「別の日に」は、退職日を超えて指定することができません。退職した後には、もう有給を取る日が存在しないからです。

つまり、退職日までの間に有給を消化したいと申し出た場合、会社には動かせる先がありません。結果として、退職時の有給消化は断れないということになります。

私が退職の面談に関わってきた中でも、有給の申し出をお断りしたことはありませんでした。上司も含め、断れないものだという前提で対応していた、というのが実際のところです。ですから、「言ったら怒られるのでは」という心配は、まずしなくて大丈夫です。

実際、ほとんどの人が退職時に有給をまとめて使っています

数字の感覚もお伝えしておきます。私が見てきた範囲では、退職される方のうち——

  • 全部使う方が、およそ8割
  • 一部だけ使う方が1割
  • ほとんど使わない方が1割

という割合でした。まとめて使うことは、例外でも図々しいことでもありません。むしろ、それが普通です。

もうひとつ安心材料を。最終出勤日は、基本的にご本人の申し出どおりに進めていました。会社が勝手に「この日まで出てきてください」と決めることは、私が関わってきた中ではありませんでした。

まねぶ
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中には、引き継ぎを優先して有給を使わずに辞めていく方もいます。こちらとしては、かえって気を使ってしまうものです。使わないことが美徳、ということはありません。

なお、自分の有給が何日残っているか分からない、という場合は、まず残日数の確認からです。付与のルールはこちらで整理しています。

👉 あわせて読みたい:「入社半年なのに有給がない?」付与のルールと自分の日数の確認方法

退職日は「引き継ぎ+有給消化」の両方から決めると、話が早い

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

権利として有給は使えます。そのうえで、退職日をどう決めるかで、話の進み方は大きく変わります

私が見てきた中で、いちばんスムーズだったのは、引き継ぎに必要な期間と有給の残日数、その両方を計算してから退職日を決めてこられた方です。この場合、多少引き継ぎの期間が足りなくても、問題になることはまずありませんでした。「ここまで考えてくれたなら」と、会社側も自然に受け止められるからだと思います。

具体的には、こう組み立てます。

退職日は2つを足してから決める。退職を伝える日から、引き継ぎに必要な期間(例3週間)と有給の残日数(例15日)を足した先を退職日にする。有給を削って引き継ぎの時間を作るのではなく、両方を足した分だけ退職日を後ろにする
  1. 有給の残日数を確認する(例:15日)
  2. 引き継ぎに必要な期間を見積もる(例:3週間)
  3. この2つを足した期間を、退職を伝える日から先に確保する
  4. その先の日付を退職日として申し出る

大切なのは順番です。有給を削って引き継ぎ期間を作るのではなく、両方を足した分だけ、退職日を後ろに置く。これだけで、有給は満額使えて、引き継ぎの時間も確保できます。

だからこそ、退職を考え始めたら、早めに動くほど選択肢が増えます。退職日までの日数に余裕があるほど、この足し算が楽になるからです。

退職までの流れ全体は、こちらで時系列に整理しています。

👉 あわせて読みたい:退職を決めたら何をいつまでに? やることを時系列リストで人事目線で整理

有給消化だけで退職日を決めると、何が起きるか

逆のパターンについても、正直に書いておきます。責めたいのではなく、知っておくと避けられることだからです。

退職日の決め方で話の進み方が変わる。引き継ぎの期間と有給の残日数の両方を足して決めた退職日はそのまま話が進む。有給の残日数だけで決めた退職日は、会社から退職日を延ばせませんかと相談が入ることがある

有給の残日数だけを計算して退職日を決めて申し出た場合、引き継ぎの期間がほとんど残らないことがあります。このとき、会社側は困った状況になります。有給を削ってくださいとは言えないからです。断れないことは、会社側も分かっています。

そうなると、できるのは「退職日を少し延ばしていただけませんか」とお願いすることだけです。この相談が発生すると、お互いに少し気まずい間ができることがあります。読者のみなさんにとっても、気持ちのいい時間ではないはずです。

先ほどの足し算をしておくだけで、この相談そのものが起きません。それだけの違いです。

ただし、体調がすぐれないときは、自分を最優先にしてください

ここまで「引き継ぎも考えて」と書いてきましたが、はっきりした例外があります

体調を崩している場合、とくに心の面がつらい状態にある場合は、引き継ぎより自分を優先してください。会社に居続けること自体が状態を悪くしてしまうなら、迷わず、消化できる有給を使って離れることを考えていいと思っています。

これは逃げではありません。回復してからでなければ、次のことは考えられないからです。引き継ぎは、あくまで体力と心に余裕があるときの話です。

なお、病気やケガで休んでいる状態から退職する場合は、傷病手当金との関係で別の注意点があります。この記事の後半(よくある質問のQ4)で触れています。

有給を消化しきれないときは

希望する退職日までに、有給を使いきれないこともあります。

私が関わってきた退職面談では、希望の退職日と有給の残日数を確認して、消化しきれるかどうかを一緒に確認していました。足りない場合は、退職日を後ろにずらせないかを相談します。それでもご本人の事情で日付を動かせないときは、未消化のまま退職、ということになります。

ここで、買い取りについて触れておきます。

有給の買い上げは、原則としてできません。労働基準法は「有給休暇を与えなければならない」と定めているので、お金を払っても「休みを与えた」ことにはならない、という考え方です。法律を上回る日数の分など例外はありますが、いずれにしても会社に買い取る義務はありません。実際、私が関わってきた場でも買い取りの取り扱いはありませんでした。

つまり、「使いきれなかった分はお金で」とは考えないほうがいいということです。だからこそ、退職日を決める段階での足し算が効いてきます。

有給消化中は、どう過ごせばいいのか

「消化中も会社から連絡が来るのでは」と気にされる方がいますが、実際には、消化中に連絡を取り合うことはほとんどありません

有給消化中の過ごし方。会社との連絡はほとんどない、返却するものは最終出勤日までに(制服などは郵送で対応することも)、退職日までは在籍中で給与も社会保険もそのまま

私が関わってきた進め方では、こうなっていました。

  • 連絡先:退職の書類に書いていただいた連絡先へ、必要なときだけ連絡する
  • 返却物:最終出勤日までに返せるものは、その日までに返却(ロッカーも空にしていただく)
  • 制服など:最終出勤日に返せないものは、消化期間中に郵送していただくなどで対応

なお、有給消化中も、退職日までは在籍している状態です。給与も支払われますし、社会保険にも入ったままです。気持ちの上では「もう辞めた」と感じても、書類の上ではまだ社員——この点だけ、頭の片隅に置いておくと安心です(消化中に次の会社で働き始めてよいかは、Q2で触れます)。

就業規則も、一度見ておくと安心です

最後に、知っておくと役に立つことを2つ。

ひとつ。会社の就業規則より、国が定めた法律(労働基準法)が優先されます。就業規則に有給を制限するような定めがあったとしても、法律に反する部分は効力を持ちません。ここは安心してください。

もうひとつ。それでも就業規則は一度見ておくといいです。退職時の引き継ぎについて定めが置かれていることもありますし、退職を申し出る時期(「1か月前まで」など)が書かれていることも多いからです。知らずに進めるより、知ったうえで組み立てるほうが、結果的に自分の希望が通りやすくなります。

正直に書いておくと、有給消化そのものや、引き継ぎ期間の短さを快く思わない責任者がいるのも事実です。それでも、有給が労働者の権利であることは変わりません。だからこそ、権利は権利として使いながら、進め方だけを工夫する——それがいちばん現実的だと思っています。

まとめ 有給は堂々と使って、そのうえで退職日に余裕を

この記事の要点です。

  • 退職時の有給消化を、会社は断れません(時季変更権は退職日を超えて使えないため)
  • 私が見てきた範囲では、8割の方が全部消化。最終出勤日も基本は本人の申し出どおり
  • スムーズなのは、引き継ぎに必要な期間と有給の残日数を足してから退職日を決めるやり方
  • 消化しきれない分の買い取りは、原則としてできない(会社に義務もない)
  • 体調がすぐれないときは、引き継ぎより自分が最優先

有給を残したまま辞める必要は、まったくありません。最後まで、堂々と使ってください。そのうえで、引き継ぎの時間も一緒に足しておけば、送り出す側も、送り出される側も、気持ちよく最後の日を迎えられます。

退職の日は、これまで働いてきた時間の締めくくりです。あなたの権利も、これまで一緒に働いてきた人たちへの気持ちも、どちらも大事にできる形が、いちばん後味よく終われるのだと思います。

まねぶ
まねぶ
早めに動くほど、その両方が無理なく成り立ちます。退職を考え始めた今日が、いちばん余裕のあるタイミングです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「引き継ぎがあるから」と有給を断られました。

退職日までの有給消化を、会社が断ることはできません。会社の時季変更権は、退職日を超えて日程を動かすことができないためです。まずは落ち着いて、退職日と引き継ぎの予定を一緒に確認してみてください。それでも取り合ってもらえないときは、労働基準監督署の総合労働相談コーナー(無料)に相談できます。

Q2. 有給消化中に、次の会社で働き始めてもいいですか?

有給消化中も退職日までは在籍しているので、二重就労にあたる可能性があります。会社によっては就業規則で兼業を制限していることもあるため、先に就業規則を確認し、必要なら会社に相談するのが安全です。次の会社の入社日を退職日の翌日以降にしておくと、悩まずに済みます。

Q3. 使いきれなかった有給を買い取ってもらえますか?

有給の買い上げは原則としてできません。法律を上回る日数の分など例外はありますが、会社に買い取る義務はないので、当てにしないほうが安全です。使いきれる退職日を設定するのが確実です。

Q4. 病気で休んでいて、傷病手当金を受けています。退職するとき注意することは?

大事な注意点があります。退職後も傷病手当金を受け続けるには、①退職日までに継続して1年以上その健康保険に加入していたこと ②退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であること、そして③退職日に出勤していないことが必要です。退職日に出勤してしまうと、退職後の分が受けられなくなります。退職日の設定には特に注意してください。制度の全体像はこちらで整理しています。

👉 あわせて読みたい:傷病手当金とは?会社を休んでももらえるお金の条件・金額・申請を整理

Q5. 退職はいつまでに伝えればいいですか?

法律上は、期間の定めのない雇用なら申し出から2週間で退職できます。ただし就業規則で「1か月前まで」などと定めていることが多く、有給消化と引き継ぎの両方を確保するなら、早めに伝えるほど選択肢が増えます。退職までの流れは、こちらで時系列に整理しています。

👉 あわせて読みたい:退職を決めたら何をいつまでに? やることを時系列リストで人事目線で整理

参考にした公式情報

※この記事は一般的な考え方と公的な案内を整理したものです。退職の手続きや就業規則の内容は会社によって異なります。個別の事情については、勤務先の就業規則や、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなど公的な窓口でご確認ください。


学びはマネから。

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