病気やケガで働けないとき、お金はどうなる? 使える制度を時系列でまとめました
病気やケガで、当面働けないかもしれない——そう分かったとき、いちばん重くのしかかるのは「収入が止まるかもしれない」という不安だと思います。治療がいつまで続くのか、仕事はどうなるのか、先が見えないなかで、お金の心配だけが具体的に迫ってくる。
先に、この記事の結論をお伝えします。会社員が働けなくなったとき、その時々の段階ごとに、生活を支える制度が用意されています。休み始めから、休職中、長引いたとき、そして復帰や退職まで。この記事は、その全体を1枚の時系列マップにして、「いま自分がどこにいて、次に何を使えるのか」が分かるように整理したものです。
人事に近い立場で休職の相談を受けるなかで感じてきたのは、相談に来られる方はみなさん、すでにご自身でしっかり考え抜いているということです。「休職したほうがいいですか」と迷いを相談されることは、実は多くありません。必要なのは背中を押すことではなく、この先のお金の見通し。この記事がその地図になればと思います。
働けないときのお金は「4つの時期」で考える【全体像】
使える制度は、時間の流れに沿って切り替わっていきます。ざっくり4つの時期に分けると、迷いません。
- 時期① 休み始め……まずは有給休暇。会社への相談もここから
- 時期② 休職中……収入の穴は「傷病手当金」、医療費は「高額療養費」
- 時期③ 長引くとき……傷病手当金の期限は通算1年6か月。その先の備えも
- 時期④ 復帰する・退職を選ぶ……退職しても続く給付、失業給付の延長

ここからは、時期ごとに「使える制度」と「やること」を順番に見ていきます。くわしい制度の中身は、それぞれの解説記事につないでいるので、必要なところだけ深掘りしてください。
まずは有給休暇 会社への「最初の相談」はどうする?
数日〜数週間の療養なら、まず使うのは有給休暇です。給料が全額出る、いちばん条件の良い休み方なので、ここから使うのが基本になります。
そして、この時期にもう一つ大事なのが「会社の誰に、いつ話すか」です。人事に近い立場で受けてきた質問でいちばん多かったのは、実は制度の中身ではなく、「手続きはどうしたらいいですか」「まだ誰にも報告していないんですが、どうしたらいいですか」という、入口の質問でした。
現場で見てきた流れをお伝えすると、最初の相談先は直属の上司か、身近な人事・総務の担当者のどちらでも大丈夫です。どちらに話しても、そこから面談の場が設けられ、必要な書類の案内や会社としての手続きが動き始めます。「誰にも言えていない」段階で相談して、まったく問題ありません。むしろ早く話してもらえるほど、会社側も有給や引き継ぎの調整がしやすくなります。
あわせて、就業規則の「休職」の項目も確認しておくと安心です。休職制度は法律ではなく会社ごとのルールなので、期間や条件が会社によって異なります。
休職中の収入は「傷病手当金」、医療費は「高額療養費」
有給を使い切って休職に入ると、多くの会社で給料は止まります。ここからが公的制度の出番です。柱は2つ。
収入の穴を埋める「傷病手当金」——連続して仕事を休んだとき、給料のおよそ3分の2が健康保険から支給されます。会社員の休職を支えるいちばんの柱です。
👉 あわせて読みたい:傷病手当金とは?会社を休んでももらえるお金の条件・金額・申請を整理
医療費の上限を守る「高額療養費」——治療費の自己負担には月ごとの上限があります。医療費が100万円かかっても、自己負担は月9万円ほど。健保組合によってはさらに手厚い「付加給付」もあります。
👉 あわせて読みたい:高額療養費はいくら戻る? 自己負担の上限と、2026年8月からの変更点をやさしく整理
なお、休職中の給料やボーナス、社会保険料の支払いがどうなるかは、こちらで実際の金額感まで整理しています。
👉 あわせて読みたい:休職したら給料とボーナスはどうなる? 最初の給料日までのお金の話
手続きの面でひとつ、現場からの実感を。傷病手当金などの申請は、ご本人と健康保険(健保組合・協会けんぽ)が直接やり取りする形が基本です。会社は書類の一部(事業主記入欄)を担当しますが、進み具合を管理してくれるわけではありません。自分の健保のサイトを一度見ておくことが、この時期のいちばんの備えになります。
傷病手当金の期限は「通算1年6か月」 その先の備えも
傷病手当金には期限があります。同じ病気・ケガについて、支給を始めた日から通算で1年6か月です(途中で復帰した期間は数えない「通算」方式)。

1年6か月と聞くと長く感じますが、治療と復職準備の時間と考えると、決して余裕のある長さではありません。だからこそ、期限を意識するのは早いほうが良いと感じています。
心強い材料もあります。多くの会社には、休職中の産業医との定期面談や、復帰時の復職判定といった、復職を支える仕組みがあります。「独りで治して、独りで戻る」必要はありません。また、症状が長引き働くことが難しい状態が続く場合には、障害年金という別の制度もあります(対象になるかは症状や加入状況によるので、年金事務所や主治医に相談を)。
復帰する・退職する どちらにも「次の制度」がある
回復して復帰する場合は、産業医面談などの会社のプロセスを経て、少しずつ戻っていくことになります。一方で、治療に専念するために退職を選ぶ場合も、制度は途切れません。ここを知らずに不安になっている方が多いので、2つだけ覚えておいてください。
① 退職しても、傷病手当金は続けられることがある——一定の条件(健康保険の加入期間が1年以上など)を満たせば、退職後も引き続き受け取れます(資格喪失後の継続給付)。くわしい条件はこちらの記事で。
👉 あわせて読みたい:退職後のお金と手続き、何から考える?健康保険・年金・失業給付の「地図」
② 失業給付は「延長」できる——失業給付は「働ける状態の人」のための制度なので、病気ですぐ働けない間は受け取れません。ただし受給期間の延長を申請しておけば、回復して働ける状態になってから受け取れます。「もらいそびれた」を防ぐ大事な手続きです。
👉 あわせて読みたい:失業給付はいくら・いつから?自己都合と会社都合で何が変わるか整理

まとめ どの時期にも、次の一手がある
4つの時期を、もう一度おさらいします。
- 時期①:まず有給休暇。最初の相談先は上司でも人事でもOK。就業規則の「休職」も確認
- 時期②:収入は傷病手当金(給料の約3分の2)、医療費は高額療養費(月の上限あり)
- 時期③:傷病手当金は通算1年6か月。産業医面談などの復職支援も使う。長引くなら障害年金という道も
- 時期④:退職しても継続給付がある。失業給付は延長申請で「もらいそびれ」を防ぐ
働けなくなったときの不安は、「先が見えないこと」から来ています。でも、時間の流れのどの段階にも、必ず使える制度があります。いま必要なのは全部を覚えることではなく、自分がいまどの時期にいるかを知って、その時期の分だけ手続きをすること。それで十分です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 休職は誰でもできますか?
休職制度は法律ではなく会社ごとのルールです(期間・条件は就業規則に書かれています)。まずは就業規則の「休職」の項目を確認し、分からなければ上司か人事の担当者に聞いてみてください。
Q2. まだ誰にも話せていません。最初に何をすればいいですか?
まず主治医に「仕事を休む必要があるか」を相談し、診断書の見通しを立ててから、直属の上司か身近な人事・総務の担当者に話すのが進めやすい順番です。「誰にも言えていない」段階で人事に相談しても、まったく問題ありません。
Q3. 休職中も社会保険料は払うのですか?
支払いは続きます(免除にはなりません)。給料が止まっている間の払い方は会社によって異なるので、休職前に確認しておくと安心です。くわしくは休職中のお金の記事で整理しています。
Q4. 傷病手当金と失業給付は、同時にもらえますか?
もらえません。傷病手当金は「働けない人」、失業給付は「働ける人」のための制度で、性質が逆だからです。退職後は「傷病手当金の継続給付→回復後に失業給付(延長申請しておく)」の順番が基本です。
Q5. 家族が働けなくなりました。家族にできることはありますか?
この記事の時系列マップを一緒に眺めて、「いまどの時期か」を整理するだけでも大きな支えになります。手続きの多くはご本人しかできませんが、健保組合のサイトの確認や書類の準備は手伝えます。
参考にした公式情報
※この記事は各制度の全体像を分かりやすく整理したものです。制度の内容・金額・条件は改正されることがあり、会社の休職制度は就業規則によって異なります。実際の手続きは、必ずお勤め先・加入する健康保険・ハローワークなどの窓口で最新の情報をご確認ください。
学びはマネから。

