【会社員向け】企業型DCと新NISA、私はこう使い分けた|“出どころ”で考えるお金の整理術
「会社の制度で、企業型DC(確定拠出年金)に加入することになりました」——ある日、会社からそんな案内が届いて、半ば強制的に”自分で運用する”生活が始まった。そんな経験、ありませんか?
しかも世の中を見れば、テレビでもネットでも「新NISA」の話ばかり。そこで、あなたの頭の中はこんな疑問でいっぱいになります。
- 会社の都合で始まったこの企業型DC、いったいどう運用すればいいの?
- なんだか「給与で受け取るか、積み立てるか選べる」とも言われたけど、どうすればいいの?
- そもそも、みんなが言っている新NISAって、何がそんなにいいの?
実は私も、まったく同じところからスタートしました。そして会社の中で、こうした相談を何度も受けてきました。
この記事は、「企業型DCと新NISA、どっちが正解か」を決めつけるものではありません。そうではなく、投資が初めてだった私が、この2つをどう”整理”して、どう付き合うことにしたか——その考え方を、専門用語をかみ砕きながらお話しします。
最初に、結論だけ先にお伝えします。私がたどり着いたのは、「そのお金は、誰が出しているのか?」で仕分けるという考え方でした。
- ① 会社が出してくれる分 … これは“もらえるお金”。前向きに運用する。
- ② 自分の給与から出すか選べる分(選択制) … 私は、これは給与で受け取って、新NISAに回した。
- ③ 新NISAそのもの … 「いつでも引き出せる・商品を自由に選べる」のが、私にはいちばんの魅力だった。
(※これは「私はこう考えて、こうした」という一例であり、こうすべきという正解や、特定の商品をすすめるものではありません)
まず大前提:企業型DCと新NISAは“敵”じゃない
「DCと新NISA、どっちをやればいいの?」と聞かれることが多いのですが、私はいつも「どっちか、じゃなくて、両方使えますよ」とお答えしています。
この2つは、どちらかを選ぶライバルではありません。性格のちがう“お金の箱”が2つある、と考えるのが、私にはいちばんしっくりきました。まずは性格のちがいを、ざっくり表で見てみます。
| 企業型DC | 新NISA | |
|---|---|---|
| いつ引き出せる? | 原則60歳まで引き出せない | いつでも引き出せる |
| 商品の選択肢 | 会社が用意したメニューの中だけ | 自分で自由に選べる |
| 税金の優遇 | 運用の利益が非課税(+掛金にも優遇あり) | 運用の利益が非課税 |
| お金の性格 | 老後専用のお金 | 何にでも使えるお金 |
ざっくり言うと、企業型DCは「老後まで開けられない、固い箱」、新NISAは「いつでも開けられる、自由な箱」です。どちらが良い・悪いではなく、用途がちがう。だから、この2つを「敵」として比べるより、手持ちのお金を、性格に合わせてどちらの箱に入れるかを考えるほうが、ずっと整理しやすいんです。
そこで私が使ったのが、さきほどの「そのお金は誰が出しているのか?」という仕分けでした。ここから、1つずつ見ていきます。
仕分け①:会社が出してくれる分は、“もらえるお金”
まず、企業型DCの掛金(積み立てるお金)が、会社から出ているタイプの場合。
これは、考え方がとてもシンプルです。会社が出してくれるお金は、実質「もらえるお金」だからです。受け取らない手はありません。たしかに「会社の都合で半ば強制的に始まった」と感じるかもしれませんが、見方を変えれば、会社が老後資金を上乗せしてくれているということ。だから私は、この分については「やらされている」ではなく「もらっておこう」と気持ちを切り替えました。
問題は「もらったお金で、どの商品を選んで運用するか」のほうです。ここを“元本確保型(定期預金など)”のまま放置している人が、本当に多い。せっかく会社が出してくれたお金が、ほとんど増えないままになってしまいます。
この「会社のメニューの中から、どう商品を選ぶか」は、私の体験をふくめて1本目の記事にぜんぶ書きました。商品のタイプの見分け方から、私が実際に絞り込んだ手順までまとめてあるので、あわせて読んでみてください。
→ 【会社員向け】企業型DCで何を選ぶ?投資未経験の私がたどり着いた考え方
仕分け②:給与から出すか選べる分(選択制)を、私はこうした
次が、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
会社によっては、企業型DCに「自分の給与の一部を、積み立てに回すか、そのまま給与で受け取るか、自分で選べる」という仕組みがあります。「選択制」などと呼ばれるものです(呼び方は会社によって違います)。
世間では、この選択制について「入れたほうが得」という意見をよく見かけます。理由は、給与から積み立てに回した分は社会保険料や税金が軽くなるから。これは事実で、メリットとして本当に大きいものです。
でも、私はあえて“給与で受け取る”ほうを選びました。 世間の主流とは逆の選択です。なぜそうしたのか、正直にお話しします。
私が「給与で受け取る」を選んだ理由
私の勤め先で、この選択制(給与の一部を積み立てに回せる仕組み)が使えるようになったとき、正直に言うと、私には毎月のお金をそこに回す余裕がありませんでした。日々の暮らしで手いっぱいで、「遠い先の老後」より「いまの生活」を優先せざるを得なかった、というのが本音です。会社の中で見ていても、給与を減らしてまで積み立てに回す人は、決して多くない印象でした。
そして、踏み切れなかったもう一つの大きな理由が、「一度積み立てると、60歳まで引き出せない」ことです。何十年も動かせないお金にしてしまうことに、どうしても踏ん切りがつきませんでした。
その点、新NISAは100円からでも始められて、いつでもやめられて、いつでも利益を確定して引き出せます。この「いつでも」という安心感が、私にはいちばんありがたいものでした。だから私は、選択制で給与から出せる分は給与で受け取り、そのお金を新NISAで、自分の欲しい商品(世界中の株や米国の株)に積み立てることにしました。
知っておきたい“もう一つの注意点”(社会保険のこと)
ここで、人事の制度に関わってきた立場から、ひとつ補足させてください。あまり語られませんが、知っておいて損のない話です。
選択制で給与の一部を積み立てに回すと、社会保険料が下がります。これは「手取りにとって有利」というメリットです。ところが、この“社会保険料が下がる”ことには、裏側があります。
社会保険料は、あなたの給与額(正確には「標準報酬月額」という、給与をもとにした金額)で決まります。積み立てに回して給与額が下がると、保険料が下がる一方で、給与額をもとに計算される、いろいろな給付も下がる可能性があるのです。
| 下がる可能性があるもの | どういう場面のお金か |
|---|---|
| 将来の厚生年金 | 老後にもらう年金(の上乗せ部分) |
| 傷病手当金 | 病気やケガで働けず休んだとき |
| 出産手当金 | 出産で会社を休んだとき |
| 育児休業の給付・失業給付 | 育休中・離職したとき |
この「給付が減る可能性」は、選択制を選ぶ前にぜひ知っておきたい大事なポイントです。国(厚生労働省)も、選択制を導入する会社に対して、こうした影響を従業員へきちんと説明するよう求めています。自分の会社が配る制度の説明資料にも、注意書きとして書かれていることが多いので、一度、目を通してみてください。
この社会保険への影響は、別記事「選択制DCは「入ったほうが得」?社会保険の“見落とし”を考えてみた」で、傷病手当金・出産手当金・育児休業給付・将来の年金まで掘り下げました。
ただし、ここはフェアにお伝えします。
- 影響の大きさは、積み立てる金額や年収によって変わります。人によっては、ごくわずかです。
- そして何より、これは「保険料が安くなる」というメリットと表裏一体です。
だから、「社会保険料が安くなる税制メリットを重視する人にとっては、選択制で積み立てるのも、じゅうぶん合理的な選択だ」と私は思います。私はたまたま、「引き出せないこと」と「商品を自由に選びたいこと」を優先した、というだけのこと。ここはまさに、人それぞれです。
仕分け③:新NISAの“何がそんなにいいのか”
最後に、「そもそも新NISAって何がいいの?」に、ひとことで答えておきます。私が魅力に感じたのは、次の3つです。
- いつでも引き出せる。 老後を待たなくても、教育費や急な出費に使える。
- 商品を自由に選べる。 「全世界株(オルカン)」でも「米国株(S&P500)」でも、自分が欲しいものを買える。会社のメニューに縛られません。
- 利益に税金がかからない。 ふつう投資の利益には約20%の税金がかかりますが、新NISAの中ではゼロです。
企業型DCが「老後まで開けられない固い箱」だったのに対して、新NISAは「いつでも開けられて、中身も自分で選べる自由な箱」。だから私は、自分の給与から出すお金は、まずこの自由な箱を使いたい、と考えたわけです。
ちなみに、商品を選ぶときに必ず見てほしい「手数料(信託報酬)」の話は、DCでも新NISAでも共通で大事なので、別記事にまとめています。
→ 信託報酬って結局なに?同じ「先進国株」でも、毎年の手数料が“19倍”違うことがある
まず、自分のDCがどのタイプか確認してみよう
ここまで「会社が出す分」「選択制の分」と分けて話してきましたが、そもそも自分のDCがどのタイプか、よく分からない——という人も多いと思います。実は、それがいちばん多いつまずきです。なので、最初の一歩として、ここを確認することから始めてみてください。
- 会社からもらった企業型DCの説明資料を開く(入社時や加入時に配られているはずです。見当たらなければ、人事・総務の担当部署に聞けばもらえます)。
- 掛金を「誰が出しているか」を確認する。 「会社が出す分」だけなのか、「給与から出すか選べる分(選択制)」もあるのか。両方あることもあります。
- 選択制がある場合、いまの自分が「積み立てている」か「給与で受け取っている」かを確認する。
- 分からなければ、会社の担当部署か、DCの運営管理機関(管理画面のログイン先)のコールセンターで確認できます。
ここが分かれば、「会社が出す分は前向きに運用」「選択制は自分の考えで決める」と、頭の中がすっきり整理できます。
なお、「積み立てる商品を後から変えたい」「もっと手数料の安い商品に乗り換えたい」というときの手続き(配分変更とスイッチング)は、私の失敗談もふくめて別記事にまとめました。
→ 企業型DCの“商品の変え方”完全ガイド|配分変更とスイッチングの違い・手順・私の失敗
まとめ:どっちが正解、ではなく“置き場所”で考える
長くなったので、要点を整理します。
- 企業型DCと新NISAは敵ではなく、性格のちがう2つの箱。DCは「老後まで開けない固い箱」、新NISAは「いつでも開ける自由な箱」。
- 私は「そのお金は誰が出しているか」で仕分けた。
- 会社が出してくれる分は“もらえるお金”。前向きに運用する(中身の選び方は1本目へ)。
- 給与から出すか選べる分(選択制)は、社会保険料・税金が軽くなるメリットがある一方、将来の年金や手当が下がる可能性という裏側もある。私は「引き出せないこと」と「商品の自由さ」を優先して、給与で受け取り新NISAに回した。ただし、税制メリットを重視するなら積み立てるのも合理的。ここは人それぞれ。
- 新NISAの魅力は「いつでも引き出せる・商品が自由・利益非課税」。
いちばん大事なのは、「会社にやらされている」と放置しないこと。一度、自分のDCがどのタイプかを確認して、「このお金はどの箱に置くのがいいかな」と考えてみる。それだけで、ぼんやりした不安は、ぐっと小さくなります。
最初の一歩は、会社のDCの説明資料を引っぱり出して、「掛金を誰が出しているか」を確認してみること。すべては、そこからです。
参考にした公式情報
この記事のうち、社会保険や年金の仕組みの部分は、次の公式情報を参考にしています。制度は改正されることがあるので、最新の内容はリンク先でご確認ください。
- 標準報酬月額と厚生年金保険料の関係……日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 出産手当金・傷病手当金の計算(標準報酬月額をもとに決まること)……全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」
- 企業型確定拠出年金・選択制の制度……厚生労働省「確定拠出年金制度」
※本記事は私(まねぶ)自身の体験と考え方を記録したものであり、特定の金融商品の購入や、特定の運用方針をすすめるものではありません。制度の内容・税制・社会保険の取り扱い・上限額などは改正されることがあり、また投資には元本割れのリスクがあります。選択制の取り扱いや給付への影響は会社の制度や個人の状況によって異なります。最新の情報は、お勤め先の制度資料や公式情報を確認のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。
学びはマネから。

