【会社員向け】退職後の健康保険、任意継続と国民健康保険はどっちが安い?保険料の比べ方
会社を辞めるとき、意外と悩むのが「健康保険、どうしよう?」です。
退職後の健康保険には、大きく「任意継続(にんいけいぞく)」と「国民健康保険(国保)」という2つの選択肢があります。どちらも保険証が手に入る点は同じ。でも、保険料が人によってまったく違うので、「で、結局どっちが安いの?」がいちばん知りたいところだと思います。
私は人事に近い場所で社会保険の手続きに触れる機会があり、退職する方からこの質問を何度も受けました。そして調べてみて分かったのは、「人によって、安いほうが逆になる」ということです。この記事では、その理由を、2つのモデルケースで実際に試算しながら整理します。
この記事でわかること
- 任意継続と国民健康保険、保険料はどう決まるのか
- どっちが安いか(2つのモデルケースで年額を試算)
- 会社都合で辞めた人は、国保が大幅に安くなること(見落とされがち)
- 1年目と2年目で結論が変わることがある理由
- 自分にとってどっちが得か、調べる手順
先に結論
- まず、家族の扶養に入れないか確認する(入れれば保険料の自己負担はゼロ。いちばん軽い)
- 入れないなら、任意継続と国保の保険料を両方しらべて、安いほうを選ぶのが基本
- ざっくりの目安は…
– 年収が低め・単身 → 国民健康保険が安いことが多い
– 年収が高め・扶養する家族が多い → 任意継続が安いことが多い(任意継続は家族が増えても保険料が変わらないため)
– 会社都合・倒産・雇い止めで辞めた → 国保が大幅に安くなる(軽減制度。これが最重要)
- 1年目は任意継続、所得が下がる2年目は国保に切り替える、という選び方もできます
それでは、ひとつずつ見ていきます。
その前に:すぐ次の会社で働く人は、この記事は読まなくてOK
退職してすぐ次の会社に入る(空白がない)場合は、健康保険は次の会社で入り直すので、任意継続も国保も必要ありません。この記事は、辞めてからしばらく無職の期間がある人(転職活動をする、少し休む、独立する、家庭の事情で離れる…など)に向けたものです。
おさらい:退職後の健康保険は3択
退職後の健康保険には、次の3つの道があります。
- A. 任意継続:今まで会社で入っていた健康保険に、辞めた後も最長2年間つづけて入る
- B. 国民健康保険(国保):お住まいの市区町村が運営する保険に入る
- C. 家族の扶養に入る:配偶者など家族の健康保険に「被扶養者」として入れてもらう(収入の条件あり。保険料の自己負担なし)
Cの扶養に入れるなら、それがいちばん負担が軽いので、まず確認をおすすめします。この記事では、迷う人が多いAとBの比べ方にしぼって解説します。
任意継続の保険料は、どう決まる?
任意継続の保険料は、ざっくり「在職中の約2倍」になります。理由は、在職中は会社が半分払ってくれていた保険料を、辞めると全額自分で払うことになるからです。
計算のもとになるのは、退職時の「標準報酬月額」(給料のものさしのような区分)です。これに保険料率をかけます。
👉 「標準報酬月額」のしくみはこちら:【会社員向け】社会保険料が急に増えた・減ったのはなぜ?標準報酬月額の仕組みを人事目線で整理してみた
ただし、ここに大事な上限があります。
- 協会けんぽの場合、計算のもとになる標準報酬月額には上限(32万円)があります(2026年度)。
- つまり、在職中の給料が高かった人ほど、上限で頭打ちになって割安になります。
- もう一つ大きいのが、扶養する家族が何人いても、保険料は増えないこと。配偶者や子どもを扶養に入れても、保険料は本人の分だけです。
保険料率は、協会けんぽ・東京支部の2026年度で約10.08%(健康保険9.85%+子ども・子育て支援金0.23%)。40〜64歳の人は、これに介護保険料(1.62%)が加わって約11.70%になります(健康保険組合の場合は率や上限が異なります)。
国民健康保険の保険料は、どう決まる?
国保の保険料は、前年の所得をもとに決まります。大きく分けて、
- 所得割:前年の所得に応じてかかる部分
- 均等割:加入する人数に応じてかかる部分(一人いくら、という固定額)
の2つでできています(自治体によっては、さらに別の区分があります)。
ここがポイントです。
- 前年の所得が高い人ほど、所得割が高くなる
- 加入する家族が増えるほど、均等割が人数分かかる(任意継続と逆で、家族が多いと高くなりやすい)
- 保険料率は市区町村ごとに違うので、住む場所によって金額が変わります
また、所得が一定以下の世帯は、均等割が軽減される制度(7割・5割・2割軽減)もあります。
【見落としがち】会社都合・倒産・雇い止めなら、国保が大幅に安くなる
ここが、いちばん知ってほしいところです。
倒産・解雇・雇い止めなど、自分の意思でない理由で辞めた人(雇用保険でいう「特定受給資格者」「特定理由離職者」)は、国保の保険料が大幅に軽減されます。
- しくみ:保険料の計算で、前年の給与所得を「30%」とみなして計算してくれます(つまり、所得が約3分の1として扱われる=保険料がぐっと下がる)。
- 対象:離職時に65歳未満で、雇用保険の受給資格者証(または受給資格通知)の「離職理由コード」が対象の番号であること。
- 期間:離職した日の翌日から、その翌年度の末まで(おおむね1〜2年)。
- 注意:自動では適用されません。市区町村への申請が必要です。
会社都合などで辞めた人は、この軽減で国保が任意継続より大幅に安くなることが多いので、必ず市区町村の窓口で確認してください。
【山場】2つのモデルケースで試算してみる
では、実際にどれくらい違うのか。よくある2つのケースで、1年分の保険料をざっくり計算してみます。
> ※ここから先の金額は、2026年度・協会けんぽ東京支部と東京23区のおおよその料率を使った「概算の一例」です。料率は自治体・年度・賞与の有無で変わります。正確な金額は、お住まいの市区町村の窓口や、国保料金シミュレーターでご確認ください。
モデルケース1:30代・単身・賃貸(前職の年収350万円)
前職の年収が350万円ほどで、転職活動のために数か月の無職期間がある人を想定します(40歳未満なので介護保険料はかかりません)。
- 退職時の標準報酬月額:26万円とする
- 前年の給与所得:約236万円(年収350万円から計算)
| 区分 | 任意継続 | 国民健康保険(自己都合) | 国保(会社都合の軽減後) |
|---|---|---|---|
| 計算のもと | 標準報酬月額 26万円 | 前年所得 約236万円 | 所得を30%とみなし 約71万円 |
| 年額(概算) | 約31万円 | 約26万円 | 約9万円 |
| ひと月あたり | 約26,000円 | 約22,000円 | 約8,000円 |
→ このケースでは、国民健康保険のほうが少し安い。さらに、もし会社都合で辞めていれば、国保は年9万円ほどまで下がり、断然お得です。前年の所得がそれほど高くない単身の人は、国保が有利になりやすい、というのが分かります。
モデルケース2:40代後半・配偶者と子ども2人・持ち家(年収700万円・課長職)
家庭の事情などで退職する、扶養家族が3人いる管理職の人を想定します(本人は40〜64歳なので介護保険料がかかります)。
- 退職時の標準報酬月額:44万円 →任意継続は上限の32万円で計算
- 前年の給与所得:約520万円(年収700万円から計算)
- 国保は世帯単位。加入するのは本人+配偶者+子ども2人の4人分
| 区分 | 任意継続 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 計算のもと | 上限の標準報酬月額 32万円 | 前年所得 約520万円 + 4人分の均等割 |
| 扶養家族の保険料 | 追加なし(4人でこの金額) | 人数分の均等割が加算 |
| 年額(概算) | 約45万円 | 約88万円 |
| ひと月あたり | 約37,000円 | 約74,000円 |
→ このケースでは、任意継続が圧倒的に安い。理由は2つ。①在職中の給料が高くても、任意継続は上限32万円で頭打ちになる。②任意継続は家族が何人いても保険料が変わらないのに、国保は家族の人数分、均等割が積み上がる。年収が高め・扶養家族が多い人は、任意継続が有利になりやすいのです。
このように、同じ「退職後の健康保険」でも、その人の年収と家族構成で、安いほうが逆になります。だからこそ、「みんなが任意継続だから」ではなく、自分の数字で比べることが大事です。
1年目と2年目で、結論が変わることがある
もう一つ知っておきたいのが、時間がたつと有利・不利が入れ替わることです。
- 任意継続:保険料は原則2年間ずっと同じ(退職時の給料がもと)。
- 国保:前年の所得がもと。退職して収入が下がると、翌年の国保はぐっと安くなる。
つまり、「1年目は任意継続が安いけれど、所得が下がった2年目は国保のほうが安くなる」というケースがよくあります。2022年の制度改正で、任意継続は途中でやめて国保に切り替えられるようになりました(以前より柔軟になりました)。なので、
- 1年目:任意継続(または国保)
- 2年目:国保に切り替え
という選び方も、選択肢に入れておくとよいと思います。
自分にとってどっちが得か、調べる手順
私が整理するなら、こんな順番です。
- 家族の扶養に入れるか確認する(入れれば自己負担ゼロ。いちばん軽い)
- 会社都合・倒産・雇い止めで辞めたか確認する(該当すれば国保の軽減が効くので、国保が有利になりやすい)
- 任意継続の保険料を調べる(在職中の健康保険=協会けんぽや健康保険組合に聞く。退職時にもらう書類でも分かることがある)
- 国保の保険料を調べる(お住まいの市区町村の窓口で試算してもらえる。ネットの国保シミュレーターでも概算が出る)
- 両方を比べて、安いほうを選ぶ。あわせて「2年目に切り替えるか」も考える
つまずきやすいポイント・注意
- 任意継続は「20日以内」が鉄則:退職日の翌日から20日以内に申し込まないと入れません。1日でも過ぎるとアウトなので、迷っている時間が長い人ほど要注意です。
- 扶養を先に確認:扶養に入れるのがいちばん負担が軽いので、AとBを比べる前に確認を。
- 会社都合の軽減は申請が必要:自動では下がりません。雇用保険の受給資格者証を持って市区町村へ。
- 金額は必ず自分の自治体で確認:この記事の試算はあくまで一例です。国保の料率は自治体ごとに違うので、最終的な判断はお住まいの窓口の正確な金額で。
まとめ
- 退職後の健康保険は任意継続・国保・扶養の3択。まず扶養に入れるかを確認。
- 任意継続と国保は、人によって安いほうが逆になる。
– 年収低め・単身→国保が有利になりやすい
– 年収高め・家族多い→任意継続が有利になりやすい(上限32万円+家族の追加負担なし)
– 会社都合・倒産・雇い止め→国保が大幅に軽減され、断然有利になりやすい
- 1年目は任意継続、2年目は国保という切り替えも選択肢。
- 大事なのは「みんながこうだから」でなく、自分の数字で比べること。窓口やシミュレーターで両方の金額を出して決めましょう。
退職後の手続き全体の流れ(年金・失業給付など)は、別の記事でまとめています。
👉 あわせて読みたい:【会社員向け】退職後のお金と手続き、何から考える?健康保険・年金・失業給付の「地図」
👉 あわせて読みたい:【会社員向け】失業給付はいくら・いつから?自己都合と会社都合で何が変わるか整理
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、任意継続と国保はどっちが安いですか?
人によって違います。年収が低め・単身なら国保、年収が高め・扶養家族が多いなら任意継続が安くなりやすい傾向です。会社都合で辞めた人は国保が大幅に軽減されるので国保が有利。最終的には、両方の金額を窓口で出して比べるのが確実です。
Q. 任意継続にすると、保険料は在職中の何倍ですか?
おおよそ2倍です(会社が払っていた分も自分で払うため)。ただし計算のもとになる標準報酬月額には上限(協会けんぽは32万円)があるので、給料が高かった人は2倍より抑えられます。
Q. 扶養する家族がいる場合は?
任意継続は、家族を何人扶養に入れても保険料は変わりません。一方、国保は加入する家族の人数分、均等割がかかります。なので、扶養家族が多い人は任意継続が有利になりやすいです。
Q. 会社都合で辞めました。国保が安くなると聞きましたが本当ですか?
本当です。倒産・解雇・雇い止めなどで辞めた人は、国保の計算で前年の給与所得を30%とみなしてもらえるため、保険料が大きく下がります。ただし市区町村への申請が必要で、雇用保険の受給資格者証が要ります。
Q. あとから任意継続をやめて、国保に変えられますか?
2022年の改正で、任意継続を途中でやめて国保に切り替えられるようになりました。所得が下がる2年目は国保のほうが安くなることが多いので、切り替えを検討する価値があります。
参考にした公式情報
※ 保険料率・上限額・軽減制度は、自治体や年度によって変わります。金額はあくまで概算の一例であり、正確な金額や、ご自身が当てはまるかどうかは、必ずお住まいの市区町村・加入していた健康保険の窓口でご確認ください。この記事は特定の選択をすすめるものではなく、最終的な判断はご自身で行ってください。
学びはマネから。

