退職したいけど何から始める? 在職中にやっておくことと「自分の相場」の知り方

「辞めたいわけじゃない。でも、このままでいいのかな——」

そんなモヤモヤを抱えたまま、何となく毎日を過ごしている。何かしたいけど、何から手をつけたらいいかわからない。

私は人事に近い立場で、退職や転職にまつわる相談を受けることもありました。退職していく人を見送る側として気づいたのは、在職中のうちに動いていた人と、退職を決めてから慌てて動いた人では、その後の落ち着き方がまるで違ったということです。

この記事では、まだ退職を決めていない段階——「考え始めたかもしれない」くらいの段階——でやっておくと安心なことを5つ整理しました。

先に結論を書くと、5つの中で一番大きいのは「自分の相場」を知っておくことです。相場を知らないまま辞めて、「もっと早く調べておけばよかった」と後悔する人を何人も見てきたからです。

転職するかどうかに関係なく、自分と似た経歴の人がどんな条件で求められているかを知っておくだけで、「辞める」にしても「残る」にしても、根拠のある判断ができるようになります。


在職中にやっておくと安心なこと 5つ

退職を「考え始めた段階」で確認しておくと安心なことを5つにまとめました。どれも在職中だからこそ確認しやすいものばかりです。

① お金の現在地を確認する

辞めた後、しばらくの間どうやって生活するか。これが見えないまま退職すると、焦りが判断を歪めます。

確認しておきたいことは3つです。

  • 貯蓄で何ヶ月分の生活費をまかなえるか
  • 退職金の有無と、おおよその見込み額(就業規則や退職金規程に記載されていることが多い)
  • 失業給付(雇用保険)を受けられる条件と期間

退職金は、勤続年数や退職事由(自己都合か会社都合か)で金額が大きく変わることがあります。「もらえると思っていたのに、条件を満たしていなかった」というケースも実際に見てきました。在職中に就業規則で確認しておくのが確実です。

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② 有給休暇の残日数を確認する

有給は退職時にまとめて使えることが多いのですが、「今、何日残っているか」を正確に把握している人は意外と少ないです。

給与明細や勤怠システムで確認できます。残日数がわかっていると、退職日の設定や引き継ぎ期間との兼ね合いを考えるときに、具体的な段取りが組みやすくなります。

👉 あわせて読みたい:有給の理由に嘘は必要? 言う義務と、申請を断られたときの対処まで人事目線で整理

③ 退職にかかわる「期間」を確認する

就業規則には、退職の申し出期限が書かれています。「退職日の1ヶ月前まで」「2ヶ月前まで」など、会社によってルールが違います。

法律上は、期間の定めのない雇用契約であれば退職の申し出から2週間で辞めることができます(民法627条1項)。ただ、引き継ぎや手続きのことを考えると、就業規則の期限を把握しておいた方が、円満に進めやすいです。

④ 自分のスキル・経歴を棚卸しする

「自分に何ができるのか」を言葉にしておくと、転職するにしても、社内でキャリアを考え直すにしても、判断の材料になります。

大げさなものでなくて構いません。「どんな業務を担当してきたか」「どんな場面で頼りにされたか」を箇条書きでメモしておくだけで十分です。

後で職務経歴書を書くことになったとき、あるいは上司との面談で自分の仕事を説明するときにも、この棚卸しは役に立ちます。

⑤ 「自分の相場」を知る

5つの中で、私が一番大事だと思っているのがこれです。

「相場」とは、自分と似た経歴・スキルを持つ人が、転職市場でどれくらいの年収・条件で求められているかということです。

この相場を知っているかどうかで、「辞める・残る」の判断の質が大きく変わります。次の章でくわしく書きます。


なぜ「自分の相場」を知ることが大事なのか

退職にまつわる相談を受ける中で、私がよく見てきた2つのパターンがあります。

在職中に相場を見ていた人は、落ち着いていました。「今の会社の条件は、外と比べてみたら悪くなかった。もう少しここで頑張ってみる」と、前より腰の据わった表情で仕事に戻っていった人もいます。「やっぱり動こう」と決めて計画的に転職していった人もいました。どちらにしても、自分で比較した上での判断だったので、納得感がありました。

一方、辞めてから初めて求人を見た人は、「思ったより求人が少ない」「年収が下がりそうで焦っている」という状態になるケースが少なくありませんでした。「在職中に一度でも見ておけばよかった」という声を、何度か聞いたことがあります。

この違いは、能力やスキルの差ではありません。「比べる材料を持っていたかどうか」の差です。

自分の相場を知らないまま「辞める・残る」を決めるのは、値段を確かめずに大きな買い物をするようなものです。

大事なことを一つ書いておきます。

相場を知った結果「今の会社で頑張ろう」と思えたなら、それが一番いい結果です。

「自分の相場を知る=転職する」ではありません。知っておくこと自体に、損はありません。


「自分の相場」を知る方法は2つある

では、実際にどうやって相場を知るのか。方法は大きく2つあります。

方法① 転職サイトで求人を見てみる(まず気軽に始めたい人向け)

一番手軽なのは、転職サイトに登録して求人を見てみることです。

「転職サイトに登録する」と聞くと、「もう転職すると決めた人が使うものでしょう?」と思うかもしれません。私も人事側にいたときは同じ印象を持っていました。

でも実際には、「情報収集だけ」で使っている人のほうがむしろ多いくらいです。登録しても応募する必要はないですし、届くスカウトメールも見るだけで構いません。

見てほしいのは、こういうことです。

  • 自分と似た経歴の人に、どんな求人が出ているか
  • 年収の相場はどのくらいか
  • 今の自分の条件と比べて、どう違うか

これだけで、「自分はこういう部分が評価されるんだな」「この業界は今こんな状況なのか」と、漠然としていたモヤモヤに少し輪郭が見えてきます。

方法② 転職エージェントにプロの目線で聞いてみる(もう一歩踏み込みたい人向け)

求人を眺めるだけでなく、「自分の経歴がどう評価されるのか、プロに聞いてみたい」と思ったら、転職エージェントに相談するという方法もあります。

転職エージェントでは、担当のキャリアアドバイザーが経歴をヒアリングした上で、「あなたの経歴ならこういう方向がありますよ」「この業界は今こういう状況です」と、具体的に教えてくれます。

自分ひとりで求人を見ているだけでは気づけなかった強みや、合いそうな方向性が見えてくることもあります。

「エージェントに相談する=転職しなきゃいけない」わけではありません。「まだ決めていないけれど、自分の市場価値を知りたい」と伝えれば、その前提で相談に乗ってもらえます。


私ならこうする——最初の一歩

ここまで、「相場を知ることが大事」「方法は2つある」と書きました。

では具体的にどう始めるか。私が同じ立場なら、こうすると思います。

一つだけ先に書いておくと、在職中は、時間にも気持ちにも余裕があります。「ちょっと覗いてみるか」くらいの気持ちで求人を見られる。でも退職を決めた後、あるいは辞めた後になると、同じ求人を見ても「ここで決めなきゃ」という焦りが入ります。冷静に比べられるのは、まだ何も決めていない今の段階です。

まず気軽に始めるなら——リクナビNEXT

「相場を知る」が目的なら、まずは求人数の多い大手の転職サイトに1つ登録して、求人を眺めてみるところからです。

相場を見るなら、まず母数の多い場所を覗くのが手っ取り早いです。求人数が国内最大級で、業種・年代を問わない——という点で、私が1つ選ぶならリクナビNEXTだと思います。

登録は無料で、5〜10分程度で完了します。この段階で履歴書や職務経歴書を作り込む必要はありません。「グッドポイント診断」という自己分析ツールもあり、自分の強みを言語化してくれるので、先ほど書いた④のスキル棚卸しにも使えます。

リクナビNEXTに無料で登録してみる

登録したら、自分の職種・業種・勤務地あたりで検索してみてください。「こんな求人があるんだ」「この年収帯が相場なのか」と、眺めるだけでも見えてくるものがあります。

もう一歩踏み込みたいなら——リクルートエージェント

求人を眺めてみて、「自分の経歴がプロの目にはどう映るのか聞いてみたい」と思ったら、転職エージェントに相談してみるのも一つの手です。

私が選ぶなら、リクルートエージェントです。

転職エージェントの中でも求人数が最も多く、業種・年代を限定しません。「まず一度プロに聞いてみたい」という最初の相談先として、一番幅広く対応してもらえると思います。

リクルートエージェントに無料で相談してみる

登録すると担当のキャリアアドバイザーから連絡が来ます。「まだ転職を決めたわけではないが、自分の相場を知りたい」と最初に伝えておけば大丈夫です。話してみて「やっぱり今は動かない」と思ったら、そのまま終わりにして構いません。

どちらを選んでも、やることはシンプル

  • 自分の経歴に近い条件で求人を見てみる(サイト)、またはプロに相場を聞いてみる(エージェント)
  • 年収・条件の「相場観」を持つ
  • 今の仕事を、その相場と並べて見直してみる

「思ったより今の会社は悪くないな」と思えたら、それは発見です。モヤモヤの正体が「隣の芝が気になっていただけ」だとわかるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。

「やっぱり他も見てみたいな」と思えたら、それも前に進んでいます。

どちらの結論になっても、自分で比べた上での判断ができている。それが「相場を知る」ことの一番の価値です。


気をつけておきたいこと

在職中に情報収集をすること自体は、何も問題ありません。ただ、3つだけ気をつけておいてほしいことがあります。

  • 勤務時間中に転職サイトを見ない(休憩時間や帰宅後に)
  • 会社のパソコンや社用メールアドレスは使わない(個人のスマートフォンやPCで登録する)
  • 社内の人にむやみに話さない(信頼できる相手でも、噂は思った以上に広がりやすい)

この3つを守っていれば、在職中に相場を調べていたことが問題になるケースは、私の経験ではほとんどありませんでした。

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まとめ——在職中の「今」だからできること

この記事でお伝えしたかったことをまとめます。

退職を考え始めた段階で、在職中にやっておくと安心なことは5つです。

  1. お金の現在地を確認する
  2. 有給休暇の残日数を確認する
  3. 退職にかかわる「期間」を確認する
  4. 自分のスキル・経歴を棚卸しする
  5. 「自分の相場」を知る

中でも一番大きいのは、⑤の「自分の相場を知っておくこと」です。

相場を知る方法は2つ。まず気軽に求人を見てみるなら転職サイト。もう一歩踏み込んでプロの目線を借りたいなら転職エージェント。どちらも無料で、在職中のまま始められます。

大事なのでもう一度書きます。

相場を知った結果「今の会社で頑張ろう」と思えたなら、それが一番いい結果です。

「辞めたいわけじゃないけど、モヤモヤしている」——その段階で冷静に動けるのは、在職中の今だけです。


よくある質問(FAQ)

Q. 転職サイトに登録したら、今の会社にバレませんか?

A. 大手の転職サイトには、特定の企業に自分の情報を非公開にする機能があります。自分の勤務先を設定しておけば、会社の採用担当者にプロフィールが表示されることは基本的にありません。登録したことが会社に通知されるような仕組みもありません。

Q. 転職エージェントに相談したら、転職しないといけなくなりませんか?

A. なりません。「まだ決めていないが、自分の市場価値を知りたい」という相談は珍しくありません。相談した結果「今は動かない」と判断しても、それは自然なことです。

Q. 転職サイトとエージェント、どちらから始めればいいですか?

A. 「辞めるかどうかまだ決めていない」段階なら、自分のペースで見られる転職サイトからで十分です。求人を見ているうちに「プロにも聞いてみたい」と思ったら、そのときにエージェントを使えばいい、という順番が自然です。

Q. 登録したけど、いい求人がなかったらどうしたらいいですか?

A. 「今はいい求人がなかった」という情報も、立派な判断材料です。今の会社の条件が相対的に悪くないのかもしれませんし、時期によって求人の数は変わります。一度見て終わりにせず、月に1回くらい見返してみると、変化に気づきやすくなります。

Q. 登録した後、電話がたくさんかかってきませんか?

A. 転職サイト(自分で検索するタイプ)の場合、基本的に電話はかかってきません。届くのはメール(求人情報やスカウト)が中心で、通知の頻度は設定で調整できます。転職エージェントに登録した場合は、担当者から面談日程の調整で連絡が来ることがあります。

Q. 面接で退職理由をどう伝えればいいですか?

A. この記事は「まず相場を知る」段階を整理したもので、面接対策はカバーしていません。面接での退職理由の伝え方は、別の記事であらためて整理する予定です。


参考にした公式情報

※この記事は、人事に近い立場での経験をもとにした個人の整理です。個別の状況により事情は異なります。転職や退職に迷われている方は、ハローワークや転職支援サービスなどの専門窓口もご活用ください。


学びはマネから。