年末調整、何を出せばいい? 2026年の変更点と控除の見落としを人事目線で整理
毎年11月ごろになると、会社から年末調整の書類が配られます。去年の書き方をぼんやり思い出しながら記入して、よく分からないまま提出している——そんな状態で毎年やり過ごしている方は、少なくないと思います。
私は人事に近い立場で働いてきましたが、年末調整の時期に受ける質問は、毎年ほとんど同じです。「これは書かないといけないのか」「保険会社のハガキが見つからない」「この欄は何を書くのか」。つまり、分からないのはあなただけではありません。
そしてもうひとつ、お伝えしたいことがあります。2026年(令和8年分)の年末調整は、ここ数年でいちばん変更が大きい年です。所得税がかからない収入のラインが上がり、家族を扶養に入れられる条件も広がりました。去年まで扶養に入れられなかった家族が、今年から入れられる可能性があるということです。
年末調整で会社員がやることは3ステップ【全体像】
年末調整でやることを、3つのステップに分けて整理します。順番に読めば、自分が何を出せばいいのかが分かるようにしています。
- STEP 1|気づき ── 年末調整は何をしている手続きなのか(2026年の変更点もここで)
- STEP 2|調べる ── 自分に関係のある控除はどれか(書類3種類とチェックリスト)
- STEP 3|やってみる ── 提出までの段取り(証明書集めと締切、間に合わないとき)

年末調整とは? 毎月引かれている所得税は「仮の金額」
給与明細を見ると、毎月「所得税」が引かれています。実はこの金額、正しく計算された税額ではありません。
会社は毎月の給与から、国が決めた表に当てはめて、おおよその所得税を天引きしています。あくまで見込みの金額です。生命保険料を払っていることも、家族を養っていることも、この時点では計算に入っていません。
そこで年に一度、1年間の給与が確定する12月に、本当の税額を計算し直します。これが年末調整です。多く引きすぎていれば戻ってきますし、足りなければ追加で引かれます。12月や1月の給与で還付を受け取った経験のある方も多いと思います。
つまり年末調整の書類は、「私にはこういう事情があります」と会社に伝えるための紙です。ここに大事な意味があります。
人事に近い立場で見てきて実感しているのは、書かれていない事情は、ないものとして計算されてしまうということです。会社は、あなたが子どもの国民年金保険料を代わりに払っていることも、去年から親を扶養に入れられる状態になったことも、書類に書かれていなければ知りようがありません。悪意なく、ただ気づかれないまま処理されます。
年末調整で損をする理由は、制度が難しいからではなく、伝わっていないからです。この記事のいちばん大事なところは、そこにあります。
2026年(令和8年分)の年末調整はここが変わります
2026年の年末調整では、税金の計算のもとになる金額が引き上げられました。国税庁の資料をもとに、会社員に関係する部分をまとめます。
| 項目 | 去年(令和7年分) | 今年(令和8年分) |
|---|---|---|
| 所得税がかからない給与収入のライン | 160万円 | 178万円 |
| 家族を扶養に入れられる収入の条件(給与のみの場合) | 123万円以下 | 136万円以下 |
| 勤労学生控除が使える収入(給与のみの場合) | 150万円以下 | 163万円以下 |
| 23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除の上限 | 4万円 | 6万円 |
なお、この表の金額は令和8年分と令和9年分の2年間の措置です。令和10年分以後は、物価の動きに合わせて2年ごとに見直される仕組みに変わります。
会社員にとって特に大きいのは、扶養に入れられる収入の条件が広がったことです。パートで働く配偶者や、アルバイトをしている子どもの収入が「去年は少し超えていた」という場合、今年は扶養の対象になっているかもしれません。
ここで、この記事でいちばんお伝えしたい注意点です。
条件が広がっても、自分で書類に書かなければ反映されません。 国税庁も、新しく扶養の対象になる家族がいる場合は、扶養控除等申告書を提出する必要があるとしています。書くときは「異動月日及び事由」の欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載します。
会社が自動的に見直してくれるものではない、という点だけ覚えておいてください。家族の収入が去年ぎりぎりで条件を超えていた方は、今年の書類を書く前に一度確認する価値があります。
もうひとつ、誤解しやすい点を先にお伝えします。この改正が適用されるのは12月1日からです。そのため、11月までの給与から引かれる所得税はこれまでどおりで、変わりません。「11月の手取りが増えるはず」と思って給与明細を見ると、拍子抜けすることになります。差額は12月の年末調整でまとめて精算されます。
年末調整の「扶養」と、社会保険の「扶養」は別のものです
ここで、この改正にあたっていちばん気をつけたい点をお伝えします。
年末調整で出てくる「扶養」は、税金の扶養です。健康保険や年金の「扶養」とは、条件も、判断するところも別の制度です。
- 税金の扶養:家族の給与収入が136万円以下(令和8年分)なら、扶養控除や配偶者控除の対象になります。年末調整で申告するのはこちらです
- 社会保険の扶養:家族の健康保険に入っていられるかどうかの話です。年収130万円以上(60歳以上の方などは180万円以上)が見込まれると扶養から外れ、自分で保険料を払うことになります。また、勤め先の規模や働く時間によっては、それより手前で自分の勤務先の社会保険に入ります(従業員51人以上の会社で、週20時間以上など)。なお、この条件にあった「月額8.8万円以上」——いわゆる「106万円の壁」——は、2026年10月に撤廃される予定です。撤廃後は、週20時間以上働くかどうかが基準になります
つまり、税金の条件が広がっても、社会保険の条件が同じように広がるわけではありません。
この行き違いは、実際に起きています。税金の扶養の条件が上がったことを知って「今年はもっと働ける」と考えていた方が、本当は配偶者の社会保険の扶養に入ったまま働くつもりだった——気にすべき金額は別にあった、というケースです。悪気なく、2つの制度が混ざってしまっただけでした。

なお、社会保険の側も見直しが進んでいます。厚生労働省の資料では、月額8.8万円以上という賃金の条件は2026年10月に撤廃される予定とされています。最低賃金が上がり、週20時間以上働けば自動的にこの金額に届くようになったためです。会社の規模による条件も、2027年10月から段階的に広がっていきます。今年の数字が来年もそのままとは限りません。働き方を変える前に、勤務先や公式の情報で確認してみてください。
年末調整で出す書類は3種類。どれに何を書くのか
会社から配られる書類は、多くの場合3種類です(電子申請の場合は入力画面が3つに分かれています)。名前が長くて身構えますが、役割はシンプルです。
① 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
家族の情報を書く紙です。扶養する家族がいない人も含めて、原則として全員が提出します。この紙を出した会社が、あなたの年末調整をする会社になります。
② 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
名前がいちばん長い紙です。自分の1年間の収入の見込みと、配偶者や19歳から22歳の子どもの収入を書きます。名前は長いものの、書く欄は限られています。
③ 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料・地震保険料・自分で払った社会保険料・iDeCoの掛金を書く紙です。証明書の添付が必要なのは、主にこの紙です。

年末調整で使える控除の見落としチェックリスト
ここが本題です。人事に近い立場で見てきて、「書いてあれば控除できたのに」と感じることが多かったものを中心に挙げます。
□ 生命保険料・地震保険料
保険会社から10月ごろに届く控除証明書が必要です。2012年1月1日以後に契約したものが「新」、それ以前が「旧」で、書く欄が分かれています。ここは毎年、記入間違いがとても多い箇所です。証明書に「新」「旧」どちらかが印字されているので、そのとおりに書き写せば間違いません。
□ 子どもや親の国民年金保険料を、自分が代わりに払った
これがいちばんの見落としです。生計を同じくする家族の社会保険料を自分が払った場合、その分は自分の控除にできます。学生の子どもの国民年金保険料を親が払っているケースは珍しくありませんが、書類に書かれていないことがよくありました。日本年金機構から届く控除証明書の添付または提示が必要なので、証明書を用意したうえで申告してください。
□ iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金
自分で掛金を払っている場合は控除できます。10月ごろに「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届きます。会社の給与から天引きされている場合は、会社側で把握しているため申告は不要です。
□ 住宅ローン控除(2年目以降)
1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整でできます。なお、2023年以降に入居した方は、金融機関が税務署に残高情報を提出する仕組み(調書方式)に切り替わってきており、残高証明書の添付が不要になる場合があります。金融機関の対応状況によって変わるので、届いた案内を確認してみてください。
□ 家族の状況が今年変わった
子どもが就職した、結婚した、子どもが生まれた、親の年金収入が変わった——こうした変化は、扶養の条件に直結します。人事側から見ると、この確認が年末調整でいちばん時間のかかる部分です。あとから証明書類の提出をお願いすることもあります。心当たりがあれば、書類を出す時点で申し出ておくと、お互いに手間が減ります。
□ 今年、転職して入社した
年の途中で入社した場合、前の会社の源泉徴収票がないと年末調整ができません。手元にない場合は、前の会社に発行を依頼してください。退職時に受け取る書類については、こちらの記事で整理しています。
👉 あわせて読みたい:退職を決めたら何をいつまでに? やることを時系列リストで人事目線で整理

年末調整の書類を出すまでにやること(証明書集めと社内の締切)
やることは、大きく2つです。
① 10月ごろに届く証明書を、なくさない
生命保険料の控除証明書、iDeCoの払込証明書、国民年金の控除証明書は、たいてい10月ごろに郵送で届きます。書類が配られるより前に届くので、「あとで使うもの」と分からずに片づけてしまう方が多い印象です。届いたら1か所にまとめておく——それだけで、11月の作業がかなり楽になります。
② 社内の締切を確認する
ここで、人事側の事情をひとつお話しします。
会社の年末調整の締切は、税務署に対する期限よりもずっと早く設定されていることがほとんどです。私が見てきた運用では、部署ごとの締切を本来の締切より1週間ほど前倒しにし、集まった分から複数回に分けて本社の担当部門へ送る、という進め方をしていました。全員分が揃うのを待っていると、確認や差し戻しの時間が取れなくなるからです。
つまり、社内の締切が早いのは、内容を確認して間違いを直す時間を確保するためです。「まだ余裕があるはず」と思っても、社内の締切は動かせないことが多いので、案内された日付を優先してください。
なお最近は、紙から電子申請に切り替える会社が増えています。人事側の実感としては、電子申請のほうが記入間違いは減り、まだ出していない人も把握しやすくなりました。案内が来たら、早めに済ませてしまうのが結局いちばん楽だと感じています。
控除証明書が間に合わない・出し忘れたときはどうなる?
毎年いちばん多く受ける質問です。結論から言うと、間に合わなくても取り返せる方法があります。慌てなくて大丈夫です。
① まず、会社の担当部門に相談する
証明書が届いていない、見つからない、という場合は、まず会社に伝えてください。年末調整は、源泉徴収票を渡す前で、翌年1月31日までであれば、会社側で計算をやり直せる場合があります。私が見てきた範囲でも、締切に少し遅れた証明書を受け取って処理していたことはありました。ただし、これは会社の運用や進み具合によって変わります。「必ず対応してもらえる」ものではないので、分かった時点で早めに伝えるのが大事です。
② 証明書は再発行してもらえる
生命保険料の控除証明書も、国民年金の控除証明書も、再発行を依頼できます。保険会社や日本年金機構の窓口に連絡すれば手続きできるので、なくしたと分かった時点で動いておくと安心です。
③ 間に合わなければ、自分で確定申告する
年末調整に間に合わなかった控除は、自分で確定申告をすれば適用を受けられます。「会社の年末調整で漏れたら終わり」ではありません。しかも、還付を受けるための申告は、その年の翌年から5年以内であれば行えます。数年前の分に気づいた場合でも、まだ間に合う可能性があります。
なお、年の途中で会社を辞めて年末に働いていない場合も、年末調整は行われないため、確定申告で精算する形になります。退職後のお金と手続き全般は、こちらで整理しています。
👉 あわせて読みたい:【会社員向け】退職後のお金と手続き、何から考える?健康保険・年金・失業給付の「地図」
まとめ 年末調整は「伝える手続き」
最後に、この記事の要点です。
- 毎月引かれている所得税は仮の金額。年末調整は1年分を計算し直して精算する手続き
- 書かれていない事情は、ないものとして計算される。損をする理由は制度の難しさではなく、伝わっていないこと
- 2026年は扶養に入れられる条件が広がった(給与収入123万円以下→136万円以下)。ただし自分で書かなければ反映されない
- 見落としやすいのは、家族の国民年金保険料を代わりに払った場合と、家族の状況が今年変わった場合
- 証明書が間に合わなくても、会社への相談か確定申告で取り返せる。還付の申告は5年以内
年末調整の書類は、たしかに分かりにくい紙です。それでも、書く欄の意味が分かっていれば、10分から15分で終わる作業でもあります。今年は変更点が多い年なので、家族の収入の条件だけでも見直してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 掛け持ちで働いています。どちらの会社で年末調整をしますか?
扶養控除等申告書は、1か所の会社にしか出せません。この申告書を提出した会社(主に働いているほうの会社)が年末調整を行います。もう一方の会社では年末調整が行われないため、両方の収入を合わせて精算するには、自分で確定申告をすることになります。年末調整をしていない給与などの合計が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
Q2. 103万・106万・130万の壁は、結局どうなったのですか?
よく言われた「103万円」は税金の壁でしたが、この金額はすでに過去のものです。2026年(令和8年分)は、給与収入178万円まで所得税がかからず、家族の扶養に入れる条件も給与収入136万円以下に広がりました。一方の106万円・130万円は、健康保険や年金(社会保険)の話で、税金とは別の制度です。なお、「106万円の壁」と呼ばれてきた月額8.8万円という条件は、2026年10月に撤廃される予定です。撤廃後は、週20時間以上働くかどうかが基準になります。この2つを混ぜてしまうと働き方の判断を誤りやすいので、記事本文の「年末調整の『扶養』と、社会保険の『扶養』は別のものです」もあわせて読んでみてください。
Q3. 医療費控除やふるさと納税は年末調整でできますか?
医療費控除は年末調整では手続きできず、確定申告が必要です。ふるさと納税は、寄付先が5自治体以内などの条件を満たせばワンストップ特例が使えますが、それ以外は確定申告になります。どちらも年末調整の書類には書く欄がありません。
Q4. 年の途中で転職しました。何が必要ですか?
前の会社の源泉徴収票が必要です。これがないと、今の会社は1年分の給与を合計できず、年末調整ができません。手元になければ、前の会社に発行を依頼してください。年内に受け取れない場合は、自分で確定申告をする形になります。
Q5. 提出したあとに間違いに気づきました。
まず会社の担当部門に伝えてください。源泉徴収票を渡す前で、翌年1月31日までであれば、会社で計算をやり直せる場合があります。その時期を過ぎた場合や、会社での対応が難しい場合は、自分で確定申告をすれば精算できます。
参考にした公式情報
- 国税庁 年末調整がよくわかるページ
- 国税庁 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
- 国税庁 No.1130 社会保険料控除
- 国税庁 No.1140 生命保険料控除
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について
- 厚生労働省 「年収の壁」への対応
※この記事は2026年8月時点の公表資料をもとに、一般的な内容を整理したものです。控除が使えるかどうかは個々の状況によって異なり、会社ごとの運用や締切も異なります。最新の情報と正確な取り扱いは、国税庁のページや勤務先の担当部門、税務署でご確認ください。
学びはマネから。

